かんぞう・甘草・萱草・わすれぐさ
読みが同じ
カンゾウなので、ときどき混同されている植物に関する蘊蓄編です。
甘草(カンゾウ)…漢方薬に使われるのは、こちら。
ウラルカンゾウ。重要な薬用植物
マメ科。花は紫色。
日本には、自生していません。
中国東北部からモンゴルあたりに分布する
ウラルカンゾウと、ユーラシア大陸に広く分布する
スペインカンゾウの2つが、生薬として利用できます。
漢方薬へ使われるのは、おもにウラルカンゾウの方。
厚生労働省「一般用漢方製剤承認基準」(H23告示)には、
263処方が載っておりますが、そのうち
191処方くらい、実に
73%にカンゾウが配剤されます。
(カンゾウを使っても使わなくても承認される処方があるので若干幅があります)
医療用医薬品や食品の甘味料(刺身醤油とか、リコリス菓子とか)にも、甘草が使われています。
萱草(カンゾウ)…野山に咲いているのは、こちら。
ヤブカンゾウ。平地・八重・昼咲き
ヤブカンゾウ(藪萱草)や
ノカンゾウ(野萱草)、
ハマカンゾウ(浜萱草)など、ヘメロカリス
Hemerocallis 属の総称です。
別名、
ワスレグサ。「萱草」の訓読みです。
ヘメロカリスは、「1日の美」を意味し、個々の
花の寿命が1日(一日花)であることを表しています。
ユリ科あるいは
ススキノキ科(またはキスゲ科、ワスレグサ科)
*長らくユリ科とされてきた植物群の再分類が今盛んです。その話はまた機会を改めて…
ノカンゾウ。平地・一重・昼咲き
花は赤~オレンジ~黄色です。園芸品種には紫色とか白もあります。
萱は、
わすれるの意味との由。中国では
忘憂草とも。青い花のワスレ
ナグサとは
無関係。
きれいな花を眺めていると憂いを忘れるのか。それとも食べると美味しいので憂いを忘れるのか…?笑
金針菜は、中国にあるホンカンゾウのつぼみです。ヤブカンゾウやノカンゾウのつぼみも食べられます。特にヤブカンゾウは八重咲きで、ボリューミーでオススメ。
春、地面から出てきたばかりの若苗も美味です!
キスゲ(ユウスゲ)高原の花。夜咲き
立原道造の詩にしばしば登場する
萱草(わすれぐさ)は、
キスゲ(黄菅、別名ユウスゲ=夕菅)と考えられます。
本州中部では海抜1,000mほどの高原、原野にみられます。
夕方から翌朝にかけて開花する
夜咲きで、花はレモンイエロー、ほのかな芳香があります。儚げな姿が詩人の印象と重なりますね。
もう少し高い山地に群生して、オレンジイエロー昼咲きのニッコウキスゲ(別名ゼンテイカ)は、ワスレグサと呼ばれることはあまり無いようですが、呼んでも別に間違いではないでしょう。
では、ごきげんよう。^^